ケムリ研究室no.3 『眠くなっちゃった』

殺伐としているのに、後味がやさしい話だった。心に刺さってしまった。

SNSの世界だと思いながら観ていたが、今やSNSの世界が一番リアルな世界なのかもしれない。消費の世界。資本主義ともまた違うムードがある。

記憶がキーになっていて、それを吸って音楽にする人がいる。その人は傲慢で人の記憶を慈しまない。その音楽を無邪気に愛する人がいる。切実に愛する人がいる。

ある人の暗い過去を知りながら愛する人がいる。けれどそれも記憶に基づかれた行動だということを感じさせる。

中身が空っぽの機械に誰かの記憶を吹き込んで愛する描写。与えられる愛がなくなったら死んでしまう人の描写。表に見えるものをすべてだと思い込んでいる人間の描写。

人間とはなんだろうか。なぜ私は、このどうしようもない人たちを慈しんでしまうのか。

緒川さんの存在が色濃い。ケラさんと緒川さんの出会いについて思いを馳せることがある。あんな相手を見つけてしまったら、どうなってしまうのかな。